我々は現代病の原因でもっとも重要なのは水素イオンであり、それが体内に溜まり細胞外液(体液)が酸性になることが様々な疾患を引き起こすと考えています。そこで最初に説明した水素イオンについてよく考えてみる必要があります。

水素イオンは何故それほどまでに生物にとって大事なのでしょうか。蛋白質、脂肪、糖類、核酸、水分など人の体を構成する主な元素は水素、炭素、酸素、窒素などの元素から成り、ほかには塩素、硫黄、リンなどの非金属元素やナトリウムやカリウム、カルシウム、マグネシウムなどの金属元素です。この中で水素が60%と最も多く酸素(25%)、炭素(10%)、窒素(2%)と続きます(72)(図21、22)。

図21

図22

水素原子は陽子1個でもっとも質量の小さい原子です。水素はこれが二個結合して電子を1個共有したものです。水素は宇宙の中でももっとも多い元素で90%以上を占めていると考えられています。生物の始まりは細胞膜の形成とその中に水素を溜めるところから始まったのではないでしょうか。細胞膜は、最初は脂質の単純な膜であったと考えられます。脂質はほとんどが水素と炭素であとわずかな酸素でできています。膜の中の水素の濃度をわずかに高くするだけで膜の外の水素との間に電気的な差が出来て電子が動きます。これが細胞のエネルギーの始まりと考えられます。今でもミトコンドリアはこの方法で電子を作り、ATPというより効率の良いエネルギーに変換しています(1,2,3)。これ以上難しい話は止めますが、とにかく水素イオンは生体エネルギーとしてなくてはならないものなのです。その点がほかの元素とは異なります。

炭素、酸素、窒素は単独でイオンとして存在することはまれで、この中では水素だけがイオンとして体中の水の中を自由に動くことができ、電気エネルギーの元である電子と結合と離解を繰り返しています。

また水素イオンの濃度(pH)は水素結合に大きな影響を与えます。水素結合とはアミノ酸が結合した蛋白質の立体的な構造に極めて重要なものです。さらにはDNAの二重らせん構造でも重要な働きをしています。水自身も水素結合で立体構造を保っています(図23)。

図23

この水素結合が解離すると蛋白質の構造が壊れ、主に蛋白質でできているあらゆる酵素やホルモンなどが働かなくなります。免疫で抗原と抗体が反応するような蛋白同士の結合でも水素結合が必要になりますが、これも水素イオンの濃度によって大きく影響されます。

蛋白質の立体構造を形成するもう一つの代表的な結合として硫黄によるジスルフィッド結合がありますがこれも水素イオンの濃度で結合が障害されたりします。

水素イオンの濃度はpHで表され、数値が高くなるにしたがって酸性、中性、アルカリ性と表現されますが、ほかのナトリウムイオン、カリウムイオン、塩素イオンなどの濃度は直接にはpHに関係しません。