それではこの水素イオンは体内でどのようにして産生されて、排泄されているのでしょうか。水(H2O)は分解されると水素イオン(H+)と水酸化イオン(OH)に分かれますが、生体内の水はH2Oで安定しています。ここに外部から水素イオンが注入されると体液は酸性になります。

実は体内の水素イオンのほとんどはブドウ糖(グルコース)を代謝してエネルギー(ATP)を作るときに産生されます。ブドウ糖の代謝を解糖系といいこれでできたピルビン酸をミトコンドリアという細胞内の器官に運んでTCA(クエン酸)回路というシステムでさらに大量のエネルギーを産生します。ブドウ糖が少ないときは脂肪(グリセロールと脂肪酸)やアミノ酸をTCA回路にまわしてエネルギーを作りますが、このときにも水素イオンは産生されます。呼吸により空気から取り込まれた酸素はこのTCA回路から産生された水素イオンと結合して水を作ります。しかし全ての水素イオンが酸素と結合して水になるわけではなく一部は水素イオンのままミトコンドリアから排泄されて細胞内に漏出します。また酸素が十分でないとき(低酸素状態)はTCA回路の働きが悪くなり、ピルビン酸が乳酸に変わり、乳酸の中の水素イオンが細胞内に放出されます(図1)。さらにこれらのエネルギー産生過程では大量の二酸化炭素ガスが発生しますが、これは水に溶けて、炭酸脱水酵素で重炭酸イオン(HCO3)と水素イオンに分解され水素イオンの供給源となります(図2)。

図1

図2

このようにして大量に発生した水素イオンは細胞内を酸性にしてしまいます。細胞は細胞内の液が酸性になると死んでしまうので、これを何とかして細胞外へ放出しようとします。そのために細胞の膜表面には様々な水素イオン排出ポンプが存在しています。

細胞の外に放出された大量の水素イオンは細胞外の体液(細胞外液)を酸性にしますが、多くは毛細血管を通して血液の中に運ばれ前述したように赤血球で緩衝されます。赤血球では水素イオンはヘモグロビンと結合したり、重炭酸イオンと結合したりして二酸化炭素と水になって二酸化炭素がヘモグロビンと結合したり(図3)して肺に運ばれ最終的にはいずれも二酸化炭素として呼気から排出されます。また血中に溶け込んだ水素イオンは尿からも排出されます。このように体内で産生された水素イオンは主に肺と腎臓から排泄されます(1, 2, 3)(図4)。

図3

図4