それでは水素イオンが細胞外液に増えると何が悪くなるのかを考えてみましょう。肺や腎臓から排出できる水素イオンの量には限界があるので血液中でも大量の水素イオンを処理できなくなるとします。そうすると細胞外液の水素イオンは血液に流すことができなくなり必然的に細胞外液の水素イオン濃度が高くなり酸性になります。

細胞内ではエネルギーを産生するために常に水素イオンが産生されているのでこれを細胞外へ放出しなければなりませんが、外に水素イオンが大量にあると細胞膜のポンプで排出するのが難しくなります。そうすると細胞内に水素イオンが溜まり細胞は死んでしまいます。

それを避けるにはエネルギー産生を抑制しなくてはならなくなります。つまり糖の代謝が悪くなります。糖が利用できなくなると食べた炭水化物から吸収されたブドウ糖が利用できなくなるのでグリコーゲンや脂肪として体内にどんどん蓄積されます。消化吸収された脂肪も同じく利用できなくなるので脂肪細胞に中性脂肪としてどんどん蓄積されます。

エネルギー産生が少なくなれば筋力は低下し運動もできなくなります。当然心臓の収縮力も弱まり、頭の回転も悪くなります。しかし食欲だけはなくならないのでどんどん食べます。そうするとこの悪循環はさらに進行してついには肥満になり、それに続く高脂血症、高血圧、糖尿病、痛風、脳梗塞、心筋梗塞、認知症などを引き起こすと考えられます。

細胞外液というのは全身の細胞の間にある液であり、脳や肝臓、腎臓などの重要臓器だけでなく皮下、腸管粘膜、筋肉などありとあらゆる細胞を取り囲んでいます。この細胞外液が酸性になると様々な酵素の反応、ホルモンの反応が影響を受けます(図12)。多くの酵素や、ホルモンは中性から弱アルカリで最大の効果を発揮しますが、これがわずかに酸性に傾くだけでその効果は激的に低下します(5,17,20,21,22,23,24,25,26,27)。

図12

細胞外液に水素イオンが増えると神経や筋肉の電気的な活動(活動電位)が低下することも知られており脱力感や疲労感の原因にもなります。さらに体液の酸性化はホルモンや神経の伝達物質の細胞からの分泌の低下を引き起こすので脳の活動やホルモンバランスに障害をきたすことになります(28,29,30)。

細胞外液には水分がありますが、この水分量が増加するといわゆる浮腫になります。足や顔がむくむとよく言いますが、そのときは全身の臓器もむくんでいる可能性があります。そのむくみの引き金に水素イオンの細胞外液への蓄積が関係している可能性があります。

細胞外が酸性になると細胞内にいたカリウムや塩素イオン(クロライドイオン)が細胞内に水と一緒に出てきて高カリウム、高クロライドになります。また蛋白と結合していたカルシウムも遊離して高カルシウムにもなります。これによってでもむくみが誘導されますが、さらにブラジキニンという炎症を引き起こす物質を不活性化するキニナーゼという酵素が酸性体液では働かなくなり血管が拡張して浮腫が助長されます(31)。つまりむくんでいる人は酸性体質の可能性が高いと考えます。

アルコールは肝臓で代謝されアセトアルデヒドから酢酸になり、水素イオンの産生源になります(1)。お酒を飲んだ翌朝に顔がむくむのは水素イオンのせいなのです(図13)。糖尿病や肥満体質の人はむくんでいることが多いのも水素イオンの貯留によるものと考えます。肥満の人は皮下脂肪が多いだけでなく、皮下に水が溜まり、むくみを伴っている場合が少なくありません。

図13