原始の時代とは言わないまでも明治の初期までは人類は低カロリー食でも生きることができました。原始の頃には一日一食どころか、いつ次の食物が得られるのか分からず、何日も食事が取れないことも少なくなかったと考えます。食物の中心は必然的に手に入れやすい植物(葉っぱ、果実、豆、芋など)になります。食物はセルロースが多く消化が悪いのでエネルギー源としては十分ではありません。カロリーの高い大きな動物の肉は月に一度程度しか取れなかったのではないでしょうか。あとは鳥、昆虫や魚貝類などが貴重な動物性蛋白源であったと想像します。

数百万年もかけて、そのような粗食で生きられるように作られている体が、いきなり高カロリーでしかも美味しい食事の嵐の中に放り込まれても、500年や1000年で適応できるはずがありません。特にこの高カロリー現代食は第二次世界大戦が終わったばかりのつい数十年前に始まったばかりなのです。もちろん、高カロリー食は人類の平均寿命を延ばしたことは間違いありません。すべての栄養成分のそろった高カロリー食はエネルギーを大量に産生できるため免疫力を高め先進国における小児の細菌やウィルスなどによる感染症による死亡を激減できたと考えます。しかし、その一方で、がん、脳血管障害などによる新たな死因が増えてきているだけでなく、肥満、高血圧、高脂血症、糖尿病などのメタボリック症候群が増加して、長生きできたとしても薬漬けや寝たきりの生活になってしまいます。

最近、飢餓遺伝子としてサーチュインという遺伝子が長寿遺伝子として注目されていますが(20)、この遺伝子は人類が飢餓になっても生きられるように組み込まれているもので、現在でも節食をすれば発現され動物や線虫で長生きできると報告されています。とはいっても今更原始の生活に戻ることはできません。そこでまずはこの高カロリー食と現代病との因果関係を明らかにし、それを分った上で如何に無理なくこの現代病を克服するかということを考えてみましょう。